起業の種類
この記事では、「起業する貴方が、知っておくべき起業の種類とは何か」という質問に回答します。
起業の種類に関する質問は、起業相談において良く受ける質問の一つです。しかし、その質問をする理由を聞いてみると、ほとんどの相談者が誤解をしている事に気づきます。
そこで、この記事では、「起業の種類を、どのように考えれば良いのか」という基本から解説したいと思います。後半では、多くの「起業の分類」についても紹介します。
起業の種類を知る必要性
起業の種類に関する誤解
起業の相談を受けていると、多くの方が、「起業の種類を最初に学習し、その種類から選んでいく事で起業は行うものだ」といった理解をされている事に驚きます。
メディアにおいては、様々な「起業の種類」が取り上げられています。ですから、起業を予定する方が、こうした理解をされてしまうのは仕方がないことなのかもしれません。
しかし、こうした理解は、適切とは言い難いものです。
勿論、起業における「選択肢」について理解している事は大切です。ですから、そういった意味において、起業の種類について学習する事は無意味ではありません。
しかし、「種類から選んでいく事で起業する」という理解には問題があります。
そのような考え方だけで、「起業の種類」を捉えてしまうと、貴方の起業にとって本当に重要な「起業の種類」を見逃してしまう危険性があります。また、学習の効率の観点からも、そのような理解はお勧めできません。
起業の種類を知るべき2つの理由
「起業の種類」を知っておくべき理由は2つあります。
1つ目は、前述の通り、「起業する上での選択肢について理解する」為です。
ただし、結論から言ってしまうと、この目的の為に「起業の種類」を事前に学習する必要性は高くありません。その理由については、後述します。
そして、もう1つの理由こそが、本当に「起業の種類」を知るべき理由なのです。
起業を成功させる為には、起業する本人が、「自分の起業が成功する為のポイント」を自覚する事が大切です。すなわち、「何に気をつけなければならないのか」という事を、自分で強く認識する必要があります。起業の種類は、この為に大切なのです。
この記事では、この「起業に成功する」という重要な目的の為に、貴方が知っているべき「重要な起業の種類」について最初に解説し、その上で、選択肢としての「一般的な起業の種類」についても紹介したいと思います。
重要な起業の種類について
重要な分類を見分ける基準
前述の通り、貴方にとって大事な「起業の種類」とは、「貴方の事業を失敗させない為に、意識すべき起業の種類」です。
もう少し詳しく説明しましょう。
起業が成功するかどうかは、準備の段階で、ある程度決まってしまう所があります。それは、「準備段階でクリアしておくべき条件を満たさずに、起業してしまう(事業を開始してしまう)」というケースが珍しくないからです。
そして、この「準備段階でクリアしておくべき条件(気をつけるべきポイント)」を貴方が把握する上で、「起業の種類」を意識する事は大切なのです。
以下では、2つの「起業の種類」の例(分類)を紹介します。これらは、多くの事業において共通して重要な分類です。
新規創出事業かどうか(例1)
1つ目の分類は、「貴方が起業しようとしている事業が、既に世の中に成立している事業での起業なのか、それとも、全く新しい事業を世の中に生み出そうとしているのか」という違いです。
「既に世の中に成立している事業での起業」の典型例は、今、勤めている会社や店から独立して、同じ事業(商売)を始めるケースです。
このような場合、世の中で、その事業の必要性は認識されている事でしょう。ですから、まず、貴方が注力しなければならないのは、「他社(他店舗)と比べても、自社が選ばれるようになる」という事です。
しかし、「全く新しい事業を世の中に生み出そうとしている」場合には、まず、世の中に、「その事業の必要性を理解して貰う」というところから始めなければなりません。
この2つでは、起業を成功させる為に必要となる準備が大きく異なります。ですから、この種類の判定は多くの起業において非常に重要です。
仕組みが重要な事業かどうか(例2)
もう1つの分類は、「その事業を成功させる為には、仕組みの構築・運用が大事かどうか」という違いです。
自社で機械を保有して行う製造業や、大がかりな店舗が必要な事業。その他、物流網を自社で築かなければならない事業や、多くの人を雇わないといけない事業。こういった事業を始める上では、資金も必要ですし、それらを円滑に運用する為の様々な準備が必要となります。
その代わり、そうした部分の準備を十分に行った上で起業出来れば、その後は、比較的、楽な商売となる事が多いと言えるでしょう(あくまで、比較的、です)。
逆に、創業者の身一つで出来るような商売(小売業など)はどうでしょうか。初期投資がほとんど必要ない為、簡単に事業のスタートをする事は出来ます。「事業を支える仕組み」に関する作業はほとんど必要ないケースすら多いでしょう。
その代わり、商売が始まった後でも、他社の参入も多いでしょう。よほど他社との競争に勝てる要因がなければ、事業を継続していくのは難しいでしょう。
この種類の違いによっても、事業の準備段階で意識すべきポイントは大きく異なります。
その他の重要な分類
これらの2つの分類以外にも、「貴方の起業の成否を決める、重要な分類」があるかもしれません。
もうお解りだと思いますが、貴方が大事にしなければならない「起業の種類」とは、「貴方の起業・事業には、どういった特色があるのか」という種類分けを行う中で、「どのような準備を行った上で、事業を開始すべきなのか」という検討に繋がる(関係する)ものです。
そして、その見つけ方としては、様々な事業と自分の事業を見比べて頂く事で、「自分が起業する事業には、こういう特色があるのだ」と気づいて頂くしかありません。残念ながら、一覧から選べば自動的に答えが出るような便利な方法はありません。
一般的な起業の種類について
メディアで取り上げられている例
ここからは、一般的に紹介されている「起業の種類」について紹介していきます。
まずは、例を見て頂きましょう。
- 副業か専業か(専従性の違い)
- 個人事業主か法人か(法人化の有無)
- 設立するのは株式会社か合同会社か(会社形態の違い)
- 営利法人か非営利法人(NPO)か(営利性の違い)
- 創業者は一人か複数か(株主や役員の人数による違い)
- 一人で起業するか従業員を雇うか(従業員の有無)
- 資金調達を外部から行うかどうか(資金調達の有無)
- 資金調達をどこから行うか(資金調達先の違い)
- 資金調達は出資か借入か(資金調達方法の違い)
- 自宅で起業するかオフィスを借りるか(本店場所の違い)
- 事業には資格や許可が必要か(許認可の必要性による違い)
など。
他にも多くの種類が、様々な媒体で紹介されています。
しかし、これらの分類については、それほど熱心に学習する必要はありません。
多くの種類が重要ではない理由
これらの多くの起業の種類(分類)が貴方にとって大事ではない理由は、「ほとんどの起業の種類は、自然に決まるものだから」です。
例えば、法人化の有無という分類によって、「個人事業主での事業」と「法人での事業」という2つの起業の種類があります。これは、起業する上で、ほぼ全ての人が直面する事になる選択肢でしょう。
しかし、これらは、事業の内容が決まり、そして、貴方自身を取り巻く環境を加味して判断すれば、自然と、どちらの選択肢にすべきかが決まる事項です。事業内容を決める前に、「どちらの種類を選ぶべきか」と考えるような性質のものではありません。
このように、ほとんどの「起業の種類」は、他の事が決まっていく(決めていく)中で、「最適な種類が、自然と決まる(選ぶ)事になる」のです。
多くの分類との適切な付き合い方
多くの方からお聞きする、「様々な選択肢から選ぶ事で、起業内容を決めたい」という考え方も理解はできます。
しかし、貴方は、「最も自分が成功できる事業(の内容・かたち)」を考える所からスタートすべきなのです。そして、その結果として、貴方にとってのベストな選択肢を選ぶべきなのです。
先に起業の種類を決めてしまう事は、貴方にとって正しい選択をする機会を奪ってしまう事になるのです。
ですから、多くの起業の種類については、選択しなければならない段階になってから、検討すれば十分なのです。
起業の種類の活用
起業の種類の判定を間違えるとどうなるか
ここからは、貴方の起業にとって重要な「起業の種類」、すなわち、「起業の準備に影響がある起業の種類」の話に戻りましょう。
もし、「自分の起業の種類について意識せず、事業を開始してしまった場合」や、「自分の起業の種類を間違えて判定してしまい、事業を開始してしまった場合」においては、どのような事が起きるのでしょうか。
例えば、本当は多くの競合(競争相手)が存在する事業での起業なのに、「世の中に存在しない、新しい事業を立ち上げる」つもりになってしまって事業を始めてしまったケースを考えてみましょう。この場合、その事業は激しい競争に敗れてしまう可能性が高いでしょう。
また、初期投資をしっかりと行い、スムーズに運営出来る準備をしてから事業を開始しなければならない起業なのに、「気軽にスタートすれば成功できる商売」と思い込んで事業を始めてしまった場合は、どうでしょうか。この場合も、事業運営がうまくいかないせいで、起業は失敗する可能性が高いでしょう。
起業の種類の活かし方
このような例を読んで、「そんな馬鹿な失敗はしないだろう」と思われたかもしれません。
しかし、起業時、多くの人は、自分(の事業)にとって都合のよい分析や予想をしてしまう傾向があります。その結果、「適切な準備が出来ていないのに、事業を開始してしまう」という事は、本当に発生してしまうのです。
そして、その失敗を防ぐ為に有用なのが、「起業の種類」なのです。
貴方は、事前に「(自分の)起業の種類を見極める」という作業を行い、起業の種類を明確に認識しておく事で、「自分の起業にとっての大切なポイントを見落とす」という失敗をする事なく、起業作業を進めていく事が出来るのです。
起業の種類が解らない場合の対応方法
貴方が、「(自分の起業のおける)重要な起業の種類を、自分が理解出来ていない」と感じているならば、それは、「起業で成功する為に準備すべき事が、理解出来ていない可能性が高い」という事を意味します。
もし、自分がそのような状態である事に気づかれた場合には、少し起業に関する準備をストップして、冷静に自分の起業内容を見直す時間を設ける事をお勧めします。
「準備を進めた後に、考え直せば良い」や「準備を進めた後に、相談すれば良い」と考えてしまう人もいます。しかし、人間の心理として、「既に行った準備は無駄にしたくない」というものがあり、準備を進めた後では、軌道修正をする事が難しくなる事が解っています。
ですから、本当に起業を成功させたいのであれば、ここで立ち止まって一息つく事をお勧めします。もし、お急ぎであれば、外部の専門家に冷静な意見を聞く事でも、解決策になるでしょう。
起業の種類について知っておくべきこと(まとめ)
- 起業の種類分け(分類)には様々な切り口があります。しかし、多くの「起業の種類」については、それを事前に勉強する必要性は高くありません。
- 起業の種類の多くは、「起業の検討を進める中で自然と決まる選択肢」として捉える事が出来るからです。
- しかし、「起業が成功する為の条件」を見極める為に活用できる「起業の種類」も存在します。そういった種類については、しっかりと認識しておくべきでしょう。
- ただし、そのような重要な起業の種類は、貴方が起業する内容が固まった後に、貴方の「起業や事業の特徴」を分析する事によってのみ判定する事ができます。
- 貴方が、重要な起業の種類を理解できている自信がない場合、それは起業の失敗に繋がる可能性が既に高いと言えます。ここで立ち止まって対応を検討する勇気を持ちましょう。