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起業における税理士の選び方

この記事では、起業する貴方の、「税理士に何を頼むべきなのか」や「税理士をどうやって選べば良いのか」といった質問に答えます。

また、税理士の費用についての目安や考え方についてもご紹介します。

税理士に頼む事ができる業務

起業中や起業後の業務に関連して、貴方が税理士に頼む事が出来る業務には、以下のようなものがあります。

税務申告

税務署に提出する申告書を作成する業務です。起業して事業を行うと、支払う税金を計算する為の書類を作成して提出する事になります(これを税務申告といいます)。また、それに関連して、様々な届出が必要になります。

これらの書類ですが、慣れていない人にとっては、かなり取っ付きづらいものになっています。また、税務に関する知識がないと、記入するのは難しいものです。

この為、貴方に会社の税金に関する知識がない場合、税理士に相談にのって貰う事が出来ます。また、書類の作成作業を、丸ごと税理士に頼んでしまう事が出来ます。

ただし、どちらの場合でも、あくまで、税金に関する最終責任は、会社側(貴方)にある事は変わりません。その点は注意して下さい。

これらは、専門的には(税理士法の用語では)、税理士の「税務書類の作成」や「税務相談」と呼ばれる業務です。

税務署対応(税務調査など)

税務署とのやり取りを任せる事が出来ます。

税務申告について不明点があると、税務署から問い合わせが来る事があります。また、特に税務申告に問題がなくても、定期的に調査も行われます。

そして、何か問題が見つかれば、正しく申告して税金を払うように税務署からお叱りを受けます。しかし、こちらの主張と税務署側の主張が食い違う事もあり、そういった場合には、不服を申し立てる事になる場合もあります。

適切に税務処理を行っていれば、別に問題はないのですが、税務署とのやり取りを嫌う経営者は少なくありません。貴方もそうであれば、税理士に頼む事で、税務署とのやり取りを代わりにしてくれたり、調査に立ち会ってくれたりもします。

税務申告については自分達だけで出来る会社でも、こうした税務署からの調査に自分達だけで対応するのが嫌なので、税理士を雇っている会社もあります。ただし、税理士を雇っても、税務署の職員と全く会わなくて良くなる訳ではありません。

専門的には、税理士の「税務代理」と呼ばれる業務です。

経理

経理(帳簿を付けたり、それを集計した表を作ったりする作業)を税理士に頼む事も出来ます。

税理士が専門とするのは税務です。領域としては、経理が終わった後の部分になります。ですから、経理については自分達でやったり、他の人に任せたりして、税務に関する部分だけを税理士に任せる事も出来ます。

しかし、経理が苦手だったり、面倒だったりする場合には、経理も税務とセットで頼んでしまう経営者が少なくありません。ただし、後述しますが、全てを税理士に丸投げする事にはリスクがあります。

専門的には、税理士の「財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務」と呼ばれる業務です。

経営判断・経営補佐

これも税理士の専門領域ではありません。

しかし、税務に関する作業をする中で、税理士は「その会社の状態を表す数字」を扱います。特に、経理の部分についても任せている場合には、そういった数字の集計作業自体を税理士が行う事になります。

この為、経営判断に必要な意見を税理士に求める経営者もいます。また、そのようなサービスを売りにしている税理士も少なくありません。

ただし、税理士は経営の専門家ではありません。この為、税理士が経営に詳しいとは限りませんので、その点は十分に注意して下さい。

また、経営は、貴方が責任を追わなければならない領域です。税務については、ある程度、専門家である税理士に処理を丸投げする事は許されるでしょう。しかし、経営判断については、それは許されないと思って下さい。経営判断の為には、税務以外にも様々な知識や経験が求められます。

選ぶ上で知っておくべき税理士のタイプ

貴方にベストな税理士を選ぶ上で、「どのようなタイプの税理士がいるのか」という事を知っておく事は有益です。

税理士にも様々なタイプがいますが、起業する貴方が税理士を選ぶ上では、3つの視点でのタイプ分けを押さえておけば問題ありません。

1つ目の視点は、「税務署の出身者かどうか」です。

2つ目の視点は、「他資格を取得している税理士かどうか」です。

最後の3つ目の視点は、「その税理士の専門分野がなにか」です。

以下、それぞれの視点でのタイプ分けについて解説します。

税務署出身者

税理士をタイプ分けする上で、真っ先に押さえておくべき点が、この「税務署出身者かどうか」という区分です。

多くの税理士は、試験を受けて税理士になります。そして、他の税理士事務所で修行します。この間に、外部からではありますが、様々な会社と携わる事で、理論だけではない実務に詳しくなります。多くの税理士が開業するのは、そのような経験を積んだ後です。

しかし、そのような試験や経験を経ずに開業する税理士がいます。それが、税務署出身者です。詳しい事情は説明を省きますが、税務署での経験があると、税理士として開業出来てしまう仕組みがあるのです。

イメージして頂けると思いますが、「通常の税理士事務所での勤務経験がある税理士」と「税務署での経験だけで独立した税理士」では、様々な違いが生まれます。どちらが上という話ではなく、得意分野が違うであろう事はイメージしていただける事でしょう。

そして、起業時や起業直後の事業に必要なのは、「似た段階の会社を、出来る限り近くで、多くみてきた経験を持つ税理士」です。ですので、よほどの事情がない限りは、税務署出身の税理士をお願いする必要はないでしょう。

もちろん、税務署出身の税理士であっても、税理士になってから様々な経験を積み、税務署出身ではない税理士と変わらない経験を有している税理士もいます。

他資格取得者

次の点が、その税理士が「どの資格取得者なのか」という区分です。

良くイメージされる税理士像は、「税理士で求められる知識だけを勉強し、税理士試験に通り、そして、税理士の業務ばかりを行っている専門家」というものでしょう。

しかし、実際には、他の資格を取得する事で、税理士試験を通らなくても税理士の資格を持っている(税理士と名乗っている)税理士もいます。詳しい資格の仕組みは省きますが、税理士とは、そういう仕組みになっているのです。

また、税理士試験は通っていても、他の資格も取得しており、そちらの業務の方が専門という税理士もいます。

「税務だけを極めるべく努力している税理士」と「他の専門分野も持っている税理士」、どちらが良いというものではありませんが、貴方が税理士を選ぶ際に、そういった事情は知っておいた方が良いでしょう。

少なくとも、「税理士資格を持っているから」というだけで、貴方が期待する「税理士としての経験」を持っているとは限らない事は知っておいてください。

得意分野

最後は、その税理士の「得意分野はなにか」という点です。

これは、先ほどの「税理士以外の得意分野」という事ではなく、「得意とする税務の分野(種類)」の違いです。

起業する貴方にとって、最も重要な税金は「法人税」です(会社を設立しない場合には、所得税の事業所得となります)。そして、この税金を苦手にしている税理士が少ない事は確かです。しかし、それでも、事業に関係する税金以外を得意としている税理士はいます。

また、同じ法人税でも、大企業と中小企業では、適用される仕組みが異なる部分がありますし、税務署に提出する書類も一部異なります。また、海外が関係する処理などでは、専門性の高い知識が求められる事もあります。全ての税理士が、法人税の全ての部分に詳しいとは限りません。

さらに、貴方が起業する業種によっては、法人税以外の税金が重要になる事もあるでしょう。

税理士に詳しくない人は、「税理士ならば、全ての税金に詳しいはず」と思いがちですが、残念ながら、そんな事はないのです。

ちなみに、税理士の試験においても、全ての税金の種類を勉強する必要はありません。科目が選択出来たり、一定の要件を満たすと、一部の科目が免除になったりします。

ですから、「税理士でも、苦手とする税金はあって当然」と思っておいて下さい。そして、貴方が重要視する税金を得意とする税理士を選ぶ必要がある事を理解しておいて下さい。

税理士の費用

税理士の費用の目安

税理士を頼むか迷っている人が不安に思っている事の一つが、「税理士を頼んだ場合の費用」についてでしょう。

ここまで読んできて頂いた方には良くご理解頂けているかもしれませんが、税理士が提供するサービスには幅があります。また、税理士の能力にも差があります。この為、税理士の費用についても、かなりの幅があるのが現実です。

とはいっても、費用の目安が欲しいと思われる方も多いでしょう。そこで、ここでは、過去に存在していた「税理士業務報酬規定(最高限度額)」から例をご紹介しましょう。

この規定によると、例えば、資本金が500万円の会社が税理士に税務顧問を依頼した場合の法人税に関する報酬は月額7万円となっています(期首資本金等基準で報酬が定まった場合の例)。なお、この金額は、「税務代理及び税務相談を含み、税務書類の作成報酬は別」です。

また、通常は法人税以外の税金についても依頼する事になるでしょうから、その分も加算される事になります。例えば、事業税は事業所1カ所あたり法人税の報酬額の10%相当額、消費税などは1税目あたり法人税の報酬額の50%相当額となっています。

その他、税務書類の作成報酬なども必要となりますが、こちらは取引金額や所得金額が基準となっていますので、年間の取引金額が小さい間は、(税務顧問と比べれば)そこまで高額にはならないでしょう。

ちなみに、税務顧問を依頼せず、個別に税務相談を依頼した場合の報酬は、口頭による1時間以内の相談の場合で2万円、書面によるものの場合には12万5千円(特別の調査研究を必要とする場合には25万円)となっています。また、会計業務を依頼した場合の報酬や税務署の調査に立ち会って貰ったり、不服申し立ての代理をして貰ったりした場合の報酬も、別途、定まっています。

税理士への依頼を検討されている方は、これらの金額を一つの目安として下さい。

税理士の費用についての考え方

現在は税理士の費用は自由化されていますので、これよりも安い金額で依頼を受けてくれる税理士もいます。また、自由化される前であっても、ある程度の割引きに応じてくれる税理士は多くいました(特に、会社の税金をまとめて依頼した場合など)。

ただし、従来、十分な実力のある税理士であれば、前述のような金額を基準として依頼を受けていた事も確かです。それを考えれば、あまりにかけ離れた金額で依頼を受けてくれる税理士には、何か事情があると考えて頂いた方が良いかもしれません。

また、税理士に依頼しない場合、税務に関する判断・書類作成・手続きなどを全て自分達で行う事になります。過去に経理部などで働いていて税務に関する経験がある場合は別ですが、全く知識がない段階から勉強するのは、やはり大変です。

そもそも、今の段階では、自分達の会社の税務が「どのくらい大変なのか(難しいのか)」という事を判断する事すら難しい人も多いはずです(会社の業務の内容などによって、税務の難しさにも、かなり幅があります)。

税理士を依頼しなくても何とかなるだろう、という甘い考えが通用しない場合がある事にはご注意下さい。

税理士の選び方

さて、税理士に頼める様々な業務を見てきました。また、税理士のタイプや費用の目安についても確認してきました。貴方には、税理士を選ぶ為の最低限の知識は、もう身についているはずです。

ここからは、具体的な税理士の選び方に入っていきます。

既に税理士の候補がいる場合

もし、既に検討している税理士がいるのであれば、ここで学んでいただいた知識を用いて、「自分にあった税理士かどうか」を判断してみて下さい。そして、問題なさそうであれば、実際に会ってみて、自分と相性が良いかどうかを判断してみて下さい。

もちろん、相手の税理士には、起業する予定の事業について説明をし、また、自分自身の税務に関する知識なども伝えた上で、どのような部分を税理士に手伝って欲しいのかを伝えるようにして下さい。

信頼して良い税理士であれば、相手の側から、改めて、「税理士に頼める業務」について、解りやすい説明をしてくれるでしょう。そして、「金額の見積もり・提案」も出してくれる事でしょう。

それらの説明に納得出来れば、その税理士と契約する事を前向きに考えて問題ないでしょう。

逆に、もし、税理士側からの説明が良く分からなかった場合には、その税理士には依頼しない方が良いでしょう。仮に依頼したとしても、今後必要となるコミュニケーションがうまくいくとは思えないからです。

なお、「金額」と「内容」のバランスについて納得出来なければ、遠慮せずに話し合いをして下さい。お金に関する部分は、後々、揉めやすい部分です。妥協はしない方が良いでしょう。

税理士候補がいない場合

まだ、具体的に検討している税理士がいないのであれば、候補者を探す事になります。

税務署に行くと、そのエリアで登録されている税理士の一覧が張り出してあります。ですから、その一覧から探す手もあります。しかし、情報があまりに少ない中からのスタートとなりますので、あまりお勧めは出来ません。

今の時代の主流としては、やはり、インターネットを用いた検索でしょう。税理士ごとに自分の得意分野をホームページやSNSなどでアピールしていますので、それを参考に探す事が出来ます。

また、税理士を紹介してくれるビジネスもありますので、そういった所に頼んでみるのも一案でしょう。

なお、貴方の拠点近くに事務所を構えている税理士が候補になるのは間違いありませんが、日本においては、都道府県を跨いだ活動も税理士に許されています。ですから、「貴方が事業を行う場所」や「貴方の事業を担当する税務署」に通える必要はありますが、エリアには、あまりこだわらず、貴方に合った税理士を探す事をお勧めします。

ベストな税理士選びの為のアドバイス

税理士選びで迷われた場合

ここまでで、税理士選びの理屈については説明しました。

しかし、実際の税理士選びの段階になると、「税理士から提示された費用が適切かどうか、判断出来ない」、「どんな税理士が自分にあっているのか、良く分からない」、「税理士が言っている事が正しいのかどうか、判断出来ない」、といった悩みが出てくる場合もあるでしょう。

残念ながら、こうした悩みを解決する為には、経験が必要です。貴方の「事業内容」や「専門家の活用の仕方」などによって、適切な判断は変わります。

費用についても、高い値段を払う価値のあるケースもあれば、出来る限り費用を抑えた方が良いケースもあります。価格の安さに関する競争をしている税理士も少なからずいますので、ネットで税理士を探していると、そのような税理士が目にとまるかもしれません。しかし、せっかく税理士に頼むのであれば、貴方の起業が成功に近づく為の手助けを本当にしてくれる税理士に頼んで頂きたいところです。

なお、税理士を後から変える事は出来ますので、「頼む税理士は気軽に決めてしまえば良い」という意見も聞きます。しかし、契約した税理士には、貴方の事業に関する「様々な重要情報」を渡す事になります。大変でも、貴方が十分に納得・信頼出来る相手を探すようにしてください。

税理士選びへの専門家の活用

とはいえ、このような問題で頭を悩ませてしまい、起業準備が止まってしまっては意味がありません。

ここでは、このような問題を解決する方法として、「税理士と付き合いなれた人に、税理士選びを手伝って貰う」という方法を紹介しておきます。

起業に関する支援を行った経験がある人(会社)であれば、起業しようとしている貴方の側の事情も理解出来ますし、税理士を活用した経験も多いでしょう。そのような専門家に、税理士選びを手伝って貰えば、貴方の悩みは解決するでしょう。

もし、税理士選びが苦痛に感じられるようであれば、このような方法も検討してみて下さい。

ただし、「税理士紹介を商売にしている業者」の場合には、「提携している税理士を押しつけるだけ」の場合もあります。その点は、ご注意下さい。

起業の為の税理士の選び方(まとめ)

  • 税理士に頼める業務としては、「税務申告」「税務署対応」「経理」「経営補佐」などがあります。ただし、どの業務も、必ず頼まなければならない訳ではありません。
  • 税理士に頼む事で、貴方の作業は楽にはなります。しかし、会社の事は経営者が自分で把握・決定すべきものです。ですから、税理士に何でも丸投げすれば良い訳ではありません。
  • 起業する上での税理士選びであれば、税理士のタイプとして、「税務署出身者かどうか」「他資格取得者かどうか」「専門分野はなにか」といった点に注意して選ぶと良いでしょう。
  • 条件にあった税理士がいれば、会ってみて、貴方とのコミュニケーションが良好かどうかを確認してみましょう。その時点で問題を感じたり、費用の面で納得がいかなったりするようであれば、その税理士には頼まない方が良いでしょう。
  • 税理士を依頼しない場合には、その業務を自分達で行う事になります。それが本当に実現可能かどうかや、その場合の手間との比較で費用については判断すれば良いでしょう。なお、税理士の費用については、依頼する項目ごとに目安があります(本文参照)。
  • 税理士選びで困った場合には、貴方の事情を理解してくれ、税理士側の事情にも詳しい専門家に税理士選びを手伝って貰うという解決策もあります。

最終更新日:2021年9月27日

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