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弁理士の独立を失敗させない為に必要な準備とは(失敗理由と対策)

この記事では、弁理士としての独立を失敗させない為に必要な準備について解説しています。

弁理士としての独立(特許事務所での開業)を考えている方に向け、弁理士の独立が失敗してしまう理由と対策について取り上げていますので、弁理士としての独立を失敗させたくない方は、ぜひ、ご一読下さい。

※開業したばかりで、未だ安定した運営が実現できていない特許事務所(弁理士事務所)の代表(所長)の方にも参考にして頂ける内容となっております。

弁理士の独立は失敗しやすいのか(弁理士独立の難易度)

この記事をお読みの方がお知りになりたい事の一つは、「弁理士としての独立は難しいのか?」という事でしょう。

結論から申し上げれば、「適切な準備をした上で独立するのであれば、弁理士の独立を成功させる事は難しくはない」という事になります。

逆に言えば、「弁理士の資格が取れたから大丈夫だろう」といった考え方で独立した場合には、「弁理士の独立は失敗しやすい」と理解して下さい。何も考えずに独立して成功できるほど、これから独立する弁理士が置かれた環境は甘くありません。

以下では、弁理士としての独立を失敗させない為に知っておいて頂きたい内容を解説します。

弁理士の独立が失敗する2つの理由

最初に、弁理士の独立が失敗してしまう2つの理由を紹介します。

資格取得の難しさによる誤解

独立・開業する為の資格として、弁理士の資格を目指す人は少なくありません。そして、弁理士の資格を取得する難易度は低くありません。

しかし、意外に思われるかもしれませんが、この「資格取得の難しさ」が、弁理士の独立開業が失敗する原因の一つになっています。

実は、難関資格を苦労して取得した人は、「自分は難易度の高い資格を取得したのだから、仕事には困らないだろう」と思ってしまいがちなのです。

しかし、現在、弁理士の独立を成功させる事は、決して容易な事ではありません。甘く考えて独立すると、失敗してしまう可能性が高いのです。

専門業務の範囲の狭さ

また、弁理士の業務には、他の資格者の業務と比べて、「得意とする業務が限られている」という特徴があります。

本当は、弁理士の資格者は多くの業務を扱う事が出来ます。また、専門領域の周辺には、大きなニーズがあると考えられています。しかし、「弁理士の必要性」について広く認知されている業務は、かなり限られているのです。

例として、税理士と比べてみましょう。多くの会社は税理士と顧問契約を結びます。ですから、競争は激しいものの、税理士の資格には「安定的な収入を確保しやすい」という面があります。また、一般の人にも、「税金問題を税理士に相談できる」という事は良く知られています。

弁護士についても、同様の事が言えます。法律が関係するトラブルがあった際に相談する相手として、弁護士は広く認知されています。更に、弁護士の資格には、「成功報酬を受け取りやすい」という面があります。

しかし、弁理士に「依頼をしなければならない」と一般の人が認識するイベントの発生頻度は高くありません。また、高額の報酬を受け取ったり、継続的に収入が得られたりするような契約を結ぶ難易度も高いと言えます。

このような特徴を十分に理解しておかないと、「期待していたような収入が得られない」という結果になり、弁理士の独立開業は失敗してしまうのです。

弁理士が扱う業務の特徴

少し内容が重なりますが、弁理士の業務の特徴について整理しておきましょう。これから独立する弁理士は、「弁理士の業務の特徴」として、次の2つの事実を絶対に忘れてはいけません。

・弁理士に依頼しないといけない業務はない

・弁理士業務に関する費用負担は、多くの依頼人にとって重すぎる

説明を読んで、「弁理士にも専権業務がある」と思われた方もいらっしゃる事でしょう。それは、その通りです。

しかし、改めて、他の士業と比べてみて下さい。税務申告は必須であり、適切な税務処理を行わなければ大変な事になります。訴訟に巻き込まれた場合、放置する訳にはいかないでしょう。

しかし、弁理士に依頼する業務というのは、「自分の権利の為に、行った方が良い」という範囲を出ません。必ずしも、弁理士に仕事を依頼する必要はないのです。また、得意とする業務の範囲の狭さについては、前述の通りです。

そして、開業前の弁理士が実感するのは難しいかもしれませんが、「弁理士が扱う業務に関する費用負担は、多くの依頼人にとって重すぎる」のです。

実際、弁理士の無料相談などに従事した経験者からは、「関心を持つ人は多いが、実際に金額を聞くと、諦める人が多い」といった話を伺います。

これらの弁理士の業務の特徴についての認識が甘いと、弁理士としての独立の難易度を甘く考えてしまい、失敗に繋がりがちです。

弁理士の競争環境(マーケット)

弁理士の競争環境(マーケット)についても、十分に理解しておいて下さい。前述の通り、弁理士の活用に不慣れな人に弁理士の報酬を支払って貰う事は容易な事ではありません。

勿論、「知財で稼ぐ」という体制が出来ている企業であれば、知財に関する費用は必要経費として予算化されています。しかし、そのような企業は多いとは言えませんし、そのような顧客の獲得については、「既に競争が激しい」という状況が生まれています。

ですから、「これから独立する弁理士でも、簡単に仕事を獲得できる」と考えるべきでないのです。

良く、弁理士について、「これからの時代は知的財産が重要であり、弁理士は、その活用を担う大事な専門職である」といった説明(資格の魅力についてのアピール)を耳にする事があります。しかし、その説明を鵜呑みにはしないで下さい。

弁理士の存在意義や重要性については、その通りなのですが、「弁理士が重要な役割を担っている」という事と、「弁理士に仕事が実際にある」という事は、全く別の話です。これから独立する人は、「弁理士としての仕事を獲得する難易度」を甘くは考えないようにして下さい。

弁理士の業務の2つのタイプ

独立して自分の手がける業務を検討する上では、「弁理士の業務の2つのタイプ」を理解している事も大切です。

伝統的な業務

士業の資格には、「資格者の存在意義」とでも言うべき業務が存在しています。これらの業務は「独占業務」になっている部分も大きく、各士業の専門分野として認知されています。

弁理士であれば「知的財産(特許や商標など)に関する手続き」が、この分類に該当します。

独立する予定の資格保有者であれば、これらの業務については詳しい事でしょう。そして、このタイプの業務が「美味しい商売」である事も間違いありません。

しかし、このタイプの業務は、多くの同業者(同じ資格保有者)が狙っています。ですから、「依頼が取りやすいタイプの業務ではない」という事は留意しておくようにして下さい。

発展的な業務

もう一つの業務のタイプは、「専門知識を生かした発展的な業務」です。良く、「コンサルティング」と呼ばれる種類の業務も、このタイプに入ります。

これらの業務には、天井知らずのニーズがあると考えられています。ですから、貴方に実力があれば、「大きく稼げる可能性のある業務」ではあります。

しかし、これらの業務は「独占業務」ではない部分が大きく、貴方の「実力」が問われます。貴方に特別なスキルがある場合などを除いて、「楽に稼げるタイプの業務である」とは考えない事をお勧めします。

弁理士の依頼人(クライアント)のタイプ

そして、弁理士の独立を失敗させない為の準備を行う上では、「弁理士の依頼人(クライアント)のタイプ」を意識する事が大切です。具体的には、次のような分類を意識するべきです。

・高い弁理士能力を求めるクライアントからの仕事かどうか

・定期的に(継続的に)依頼をするクライアントからの仕事かどうか

・積極的な顧客獲得行動によって獲得するクライアントからの仕事かどうか

独立にあたって、「あらゆるタイプの仕事をすれば良い」と考えている方もいらっしゃる事でしょう。しかし、「依頼を獲得する為に必要なこと」は、クライアントのタイプによって異なります。

そして、全てのタイプに向けた準備を最初から行う事は困難です。

ですから、自分が「どのようなスタイルで特許事務所の運営を安定させていくのか」という事は、事前に決めておくべきなのです。

弁理士の独立を失敗させない為に必要な準備とは

そして、弁理士の独立を失敗させない為には、自分が獲得する予定のクライアントのタイプに合った準備をしっかりと行った上で独立する事が大切です。

高い弁理士能力が求められるクライアント向けの準備

「高い能力が求められる仕事を依頼するクライアント」で、かつ、「継続的に依頼があるクライアント」を一定数獲得出来れば、貴方の独立は成功したも同然です。

「そのクライアントの発注量」と「貴方が目指す事務所の大きさ」によって、「どの程度の数のクライアントが必要なのか」は異なりますが、クライアントの数は1社だけでも十分に事務所の運営が安定するケースすらあります。

問題は、「そのクライアントに選び続けて貰えるだけの実力が貴方にあるのか」という点だけです。

このようなタイプのクライアントは、クライアントの側でも依頼する弁理士の能力を入念に確認します。ですから、貴方に実力があり、そのことをクライアントに納得させる事が出来るのであれば、その他の事はあまり気にしなくても大丈夫でしょう。

ただし、独立してからクライアントを探すのはリスクが大きすぎますので、核となるクライアントは確保してから独立するようにして下さい。また、独立後も、自分の弁理士としての能力を磨き、他の特許事務所に負けない結果を出し続ける事を意識するようにして下さい。

継続的に難易度の低い依頼があるクライアント向けの準備

難易度の低い依頼を継続的に出してくれるクライアントとの関係を中心とした事務所運営を考えている方もいらっしゃる事でしょう。一定以上の規模のある会社の商標管理などが、このタイプに該当します。

「難易度の低い仕事」であっても、「継続的に依頼をしてくれるクライアント」が確保出来れば、事務所の運営は安定します。そして、そのような仕事は失敗するリスクも低いと言えます。

ただし、そのような依頼については、クライアントの側でも、「自分が頼んでいる仕事は、他の事務所でも出来る仕事である」という事を理解しています。この為、何かクライアントのご機嫌を損ねるような事があると、簡単に他の事務所に仕事を取られてしまう事になります。

ですから、このようなタイプのクライアントを重要視していくのであれば、「クライアントとの関係を維持する」という能力が問われます。独立後も、顧客との関係を維持する為の努力を怠らないようにして下さい。

積極的な顧客獲得行動によって獲得するクライアント向けの準備

貴方が新規顧客を次々と獲得するような事務所運営を考えているのであれば、その「新規顧客開拓の成否」が成功を左右します。

この場合、「自分の事務所を見つけてもらう」という事、そして、「他の事務所ではなく、自分の所に依頼してもらう」という事を達成する為の能力が貴方には求められます。これらの能力さえあれば、自分が得意とする方向性に合ったクライアントを獲得すれば良いので、成功はしやすいと言えます。

ただし、求められる能力は、一般企業の事業運営で求められる能力に近いものです。その事は理解しておいて下さい。

弁理士の独立を失敗させない為の具体的なアドバイス

独立を失敗させない為の事前チェックの必要性

もうお解りだと思いますが、「自分が獲得する予定のクライアントのタイプに合った準備が出来ていないのに、独立してしまった」という失敗さえ避ける事が出来れば、弁理士の独立は成功します。

そして、その為には、「貴方が獲得する予定のクライアントのタイプに合った準備が十分に終わっているかどうか」を、独立する前にチェックしておくようにして下さい。それが、貴方を独立後の失敗から救います。

具体的には、まず、「獲得できる目処のあるクライアントからの収入だけで、事務所が運営していけるのかどうか」という点について、シミュレーションをしておくようにして下さい(数字の作業が苦手な方は、得意な人にシミュレーションを頼むようにして下さい)。

当たり前の事ですが、そのシミュレーション結果に問題がなく、そして、そのシミュレーション通りに独立できれば、貴方の独立は失敗しません。独立後は事業を伸ばした分だけ、貴方は更に成功していける事になります。

また、「獲得したクライアントが維持出来るのか」という点についてもチェックを行うべきですし、貴方が新規顧客を次々と獲得するビジネスを考えている場合には、「貴方の顧客獲得に関するビジネス能力」についてのチェックも行うべきです。

なお、貴方がビジネスの専門家でもある場合は別ですが、それ以外の場合には、「自分の顧客獲得能力(コミュニケーション能力や、集客・マーケティングに関する能力)」について、自分で判定を行うのは難しいはずです。その場合には、そのような分野に詳しい人に相談して、判定をして貰うようにして下さい。

魅力ある弁理士になる為に必要な顧客視点

最後に、もう一点、これから独立する弁理士に知っておいて頂きたい事があります。

当社では企業に経営支援を行っている関係で、経営者の方から「弁理士について思っている事(本音での評価)」を聞く機会があります。その際、「弁理士に、会社(経営)側の事情を十分に理解して貰えない」といった声(評価)を聞く事が多いのです。

勿論、企業にとって、結果を出してくれる弁理士は有り難いものです。ですから、そのような評価を受けていたとしても、高い専門能力を必要としている企業から依頼を受けている弁理士が、簡単に仕事を失うような事にはならないでしょう。

しかし、そのような企業以外からの依頼を受けている弁理士については、そのような評価は、「今後、依頼先を変えられてしまう(クライアントを失う)」という事に繋がると理解すべきです。

もっとも、この事は、これから独立する弁理士にとっては、「経営者に気に入って貰えれば、新しいクライアントを獲得出来る可能性がある」という事でもあります。

ですから、これから独立する弁理士は、専門能力向上に努めるのは当然ですが、顧客満足度を高める為に、「クライアントの経営者の事を良く理解したサービスが提供出来るようになる」という事も意識して頂きたいと思います。

そして、その為に、専門能力以外の面(主に、経営者の専門領域への理解)についてのスキルアップにも努めるようにして下さい。

弁理士以外の専門分野についての学習方法が解らない場合には、関連する専門家への相談もお勧め出来ます(この記事でお勧めしている独立前の準備やスキルアップについては、当社でも相談を承っております)。

最終更新日:2022年7月11日

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