起業する為に必要な知識とは
この記事では、起業する為に必要となる知識について解説します。なお、起業時と起業後では必要となる知識が異なりますので、それぞれのタイミングで必要となる知識を区分して紹介します。
また、知識不足の補い方(対応方法)、多くの人が誤解しているポイントについても取り上げます。最後には、知っておいて頂きたいアドバイスも掲載しておりますので、最後までお読み下さい。
起業時と起業後で必要となる知識の違い
「起業する為に必要な知識」について関心を持つ人は多いのですが、「起業時に必要な知識」と「起業後で必要な知識」が違う、という事を理解している人は少ないようです。
起業時に必要な知識は、「事業を始める為の準備を終わらせる」という目的の為に必要です。その一方、起業後に必要な知識は、「事業運営を上手に行う」という目的の為に必要となります。目的が違いますので、必要となる知識の中身も大きく異なります。
そして、起業する際には、その両方の知識を持っている事が望ましいと言えます。
起業する為に必要な知識について知りたいと考えている人は、まず、「起業の段階によって、起業に必要となる知識には違いがある」という事を知って下さい。
起業時に必要となる知識とは
起業する為に必要となる知識の内、起業時に必要となる知識は、「事業を始める為の準備を終わらせる」という目的の為に必要となる知識です。
具体的には、起業時には、以下の3つの分野の知識が必要となります。
- 事業を開始する為の実務的な知識
- 法律などの手続き面での知識
- 事業計画に関する知識
また、これらの知識に加えて、「起業の全体像を描く能力(作業計画の立案・管理能力)」も必要となります。
この「起業の全体像を描く能力」については見落とされがちですが、この能力の不足によって、起業する為に必要な知識があるにも関わらず、起業が頓挫してしまうケースは少なくありません。以下では、起業時に必要となる知識の3つの分野それぞれについて解説しますが、この能力の必要性についても覚えておいて下さい。
事業を開始する為の実務的な知識
まず、「事業を開始する為の実務的な知識」についてですが、これは、「現場の運営」に関する知識です。
起業する為には、自社の「現場の実務」が解っている必要があります。例えば、小売店や飲食店で起業するのであれば、実際の店舗運営の知識は必要でしょう。また、自社で扱う商品やサービスについての知識も必要なはずです。
それらの知識がない場合、事業を開始する為の準備に支障を来します。ですから、この分野の知識は必須となります。
万一、自分が起業する事業についての、この分野に関する知識が不足している場合には、何らかの方法で知識を補うようにして下さい。例えば、「詳しい人に起業メンバーに加わって貰う」や「他社の現場で働かせて貰う」などの方法で知識を補う事ができます。
法律などの手続き面での知識
次に、「法律などの手続き面での知識」についてです。
事業を開始する為には、様々な事を決め、また、手続きを行う必要があります。
法人を設立して事業を開始するのであれば、設立する法人についての様々な事を決める必要があります。税務署などの役所に届け出を行う必要もありますし、場合によっては、許認可を得たりする必要がある場合もあります。ですから、それらの作業を完了する為の知識が必要となります。
また、不動産を借りたり、人(従業員)を雇用したりするのであれば、その為の知識も必要となります。
知識が不足していた場合、実際に事業を開始する所までたどり着く事は出来ません。この為、この分野の知識も必須となります。
もっとも、起業の手続きの為に必要となる知識は膨大な量となります。また、起業の中身によって必要となる知識も異なります。専門家でもない限り、関連する知識を全て学ぶ必要はありません。
多くの人は、専門家に相談したり、作業を依頼したりする事で、この分野の知識不足に対応します。そして、最低限の知識取得の労力のみで起業作業を進める事になります。
事業計画に関する知識
最後は、「事業計画に関する知識」です。
実は、この分野に関する知識は無くても、起業自体は出来るケースもあります。この為、この分野の知識を持たずに起業してしまう人もいます。
ただし、事業計画が適切に立案できないと、起業後の事業運営が失敗する確率は非常に高くなってしまいます。
なぜならば、「事業計画に関する知識が無い」という事は、事業を失敗から防ぐ為の「経営に関する知識が無い」という事を意味するからです。ですから、起業後の事も考えるのであれば、この分野の知識も必須と考えて頂いた方が良いでしょう。
また、事業の利害関係者の為に、事業計画(または、それに相当するもの)を作り上げ、説明する事が必要な場合もあるでしょう。そのような場合には、事業計画に関する知識は必須となります。
特に、外部から資金調達する必要がある場合などは、この分野の知識が無いと起業が成立しなかったり、条件が大幅に悪くなったりします。
ただし、経営に関する経験の少ない人が起業する場合、この分野の知識についても、専門家に助けて貰う事で起業を実現させるケースが多くあります。「知識不足だから起業は出来ない」と考える必要はありません。
起業時には、以上、3つの分野の知識が必要となります。
起業後に必要となる知識とは
そして、起業後には、「事業運営を上手に行う」という目的の為の知識が必要となります。
起業後に必要となる知識については、起業後の人から「開業後、実際に苦労していること」を聞き取り、まとめた調査結果があります。
起業後に必要となる知識を理解して頂く上で、非常に有益な調査結果ですので、まず、その結果(上位5位まで)をご紹介しましょう。
1位 顧客・販路の開拓
2位 資金繰り、資金調達
3位 財務・税務・法務に関する知識の不足
4位 従業員の確保
5位 従業員教育、人材育成
以上が、実際に開業した人が感じている「苦労していること」です。
起業後には、貴方も同じ点で苦労する可能性が高いはずです。ですから、起業後の事業を上手に行う為には、これらの点に対応する知識を身に付けておくべきです。
この調査結果をまとめると、起業後に必要となる知識とは、以下の3つの分野の知識であると言えます。
- 販路開拓に関する知識
- 管理部門(主に財務経理)に関する知識
- 人材の獲得・育成の為の知識
※日本政策金融公庫総合研究所の「2021年度新規開業実態調査」より。2020年4月から9月の間に日本政策金融公庫国民生活事業が融資した先で、開業後1年以内の企業に行ったアンケート結果1467社分を集計したもの。
起業する為に必要な知識についての誤解
なお、起業する為に必要な知識については、良く誤解されている点があります。
起業準備中の方と「起業する為に必要な知識」について話をしていると、「起業時に必要となる知識」のみをイメージされている方がほとんどなのです。それも、手続きに関する知識に関心が集中しています。
しかし、前述の通り、起業を成功させるためには、「起業時に必要となる知識」に加え、「起業後に必要となる知識」も必要となります。
むしろ、「起業時に必要となる知識」の多くは、起業準備中にのみ必要な知識であり、「起業後に必要となる知識」の有無こそが、起業の成否を決める事になります。ですから、「起業後に必要となる知識」こそ、十分に身に付けた上で起業すべきなのです。
この点は、多くの人が正しく理解していない点ですので、お気を付け下さい。
起業する為に必要な知識を得る為のアドバイス
最後に、起業する為に必要な知識について、絶対に知っておくべきアドバイスをお伝えします。
それは、「広い範囲の知識を持った専門家に、早い段階で相談した方が良い」という事です。
実は、「開業後、実際に苦労していること」についての調査結果では、実に16.0%の人が「経営の相談ができる相手がいないこと」を「(起業後に)苦労している点」として挙げています。そして、そのように回答している人の割合は、近年、上昇傾向にあります。
相談できる相手をしっかりと確保した上で起業した人も少なくないはずですので、相談できる相手がいない状態で起業した人に限って考えれば、かなりの割合の人が、「起業後、経営に関する相談相手がいなくて困っている」という状態に直面していると考えられます。
ですから、もし、貴方が経営の相談がうまく出来ない状態で起業してしまった場合、貴方も「経営が相談できる相手が欲しい」と起業後に考えるようになる可能性は高いのです。
この為、今は必要性を強くは感じていなくても、「起業する為に必要な知識」について考える一環として、外部の専門家に相談し、経験を積んでおく事を強くお勧めします。
起業の準備が進んだ後だと、専門家に相談しても、細かい話し合いが多くなり、起業後にも通用するような経験を積んだりする事は難しくなります。ですから、「起業する為に必要な知識」について考えている段階というのは、専門家に相談する良いタイミングなのです。
早い段階から相談する経験を積んでおく事で、外部の専門家を活用するスキルを向上させた上で起業する事が可能となります。また、起業後に「経営を相談する相手がいない」という悩みを抱える事もなくなります。もちろん、相談によって、起業の準備自体をスムーズに進める事も可能となるでしょう。
専門家へ相談する必要性は、既に起業した人が証明してくれています。ぜひ、良い相談相手を見つけ、起業を成功させて下さい(当センターでも相談をお受けしておりますので、ご活用下さい)。