起業の手続きを専門家に依頼する上での注意点
起業の手続きを専門家に依頼するのであれば、そのメリットとデメリットは十分に理解した上で行って下さい。また、丸投げするべきでない部分を見極められるようにもなって頂きたいと思います。
この記事では、「起業の作業を専門家に頼む貴方が知っておくべき内容」について解説します。
起業に関する作業の丸投げとは
起業手続きの「丸投げ」とは、一般的に、「細かい指示をせず、誰かに起業に関する作業を任せる」事をいいます。
任せる相手は、一人のケースもあれば、分野ごとに複数の相手を選ぶケースもあるでしょう。
そして、起業する方の多くは、起業手続きの「少なくとも一部」を「丸投げ」する事を選択されます。
もし、全く丸投げをしないのであれば、「作業全てを自分自身で行う」か、または、「かなり細かく指示をした上で専門家に依頼する」事になります。
手続きを丸投げするメリット
手続きを丸投げし、代行して貰う事によって、起業する貴方は楽をする事が出来ます。それが、貴方が丸投げをするメリットです。
丸投げしない場合、その手続きについて、貴方はかなりの時間を取られる事もあるでしょう。また、その分野について「勉強しないといけない」事も多いでしょう。
ですから、そのメリットとデメリットをしっかりと理解した上で行うのであれば、「丸投げ」し、代行して貰う事は悪い選択ではありません。
手続きを丸投げする2つのデメリット
その一方、丸投げには、2つのデメリットがあります。
コストがかかる
1つ目のデメリットは、コスト(費用)に関する点です。
起業に関する手続きには様々なものがありますが、出来る限り自分で行った方がコストが節約出来るのは言うまでもない事でしょう。
日本においては、専門家に頼まなくても自分で出来る手続きも多いのです。ですから、自分で出来る事は自分で行う事で、費用を節約する事が出来ます。それによって、もっと重点的に使いたいところにお金を使う事が可能になります。
※自分にとって必要な専門家(特に士業)を見極めるコツについては、別途、記事を用意していますので参考にして下さい。
ベストな結果が出るとは限らない
2つ目のデメリットは、意外に思われる方が多いかもしれませんが、丸投げによって、「最良の結果が出るとは限らない」というものです。
例えば、士業などの専門家に手続きを頼んだ場合、彼らは「貴方が期待する最低限の手続き」はしてくれるでしょう。しかし、貴方の事業にとってベストな手続きをしてくれるとは限らないのです。
この点については、少し難しいと思いますので、この後、詳しく説明します。
起業手続きを丸投げしてもベストな結果が出るとは限らない理由
代行する専門家側の事情
専門家に依頼しているのに、「ベストな結果が出ない」と聞くと、専門家が怠けているように聞こえるかもしれません。
しかし、これは、彼らが悪い訳ではありません。彼らは、貴方から提供された情報をもとに誠実に仕事をしようとしてくれる事でしょう。しかし、貴方にとって、「本当にベストな手続き」をする為には、貴方の事業の事を、「貴方自身と同じ」、もしくは、「貴方が理解していないような事まで」本当に良く知る必要があります。
しかし、各分野の専門家は、起業や経営に詳しくない場合もあります。ですから、貴方の事情を完全に理解出来るとは限らないのです。
ベストな選択を敢えて行わない理由
また、貴方の側でも、それぞれの専門家に相談する際に、「そこまでの手間をかけたくない」、または、「渡す情報は最低限にしたい」と考えているかもしれません。
こうした相談者が多い事も踏まえ、「最低限の情報」で「最低限の手続き」をしようと考えている専門家も少なくありません。
また、「専門家への依頼後にも、事情は変わっていく可能性がある」という問題もあります。
あまりに「ベストな選択」を突き詰めると、少しでも事情が変わるたびに、結論が変わる可能性が出てきます。ですから、専門家の多くは、「今後、多少の変更があったり、不明点があったりしても、依頼者にとって問題が起きない」という事を重視して仕事をしようとします。
これらの事情によって、専門家に依頼しても、「貴方の起業にとってベストな選択が行われない」ケースがあるのです。
丸投げしてベストな結果を出す為に知っておくべき3つのポイント
専門家に「ベストな作業」を求めるのであれば、以下の3つのポイントは理解しておいて下さい。
費用の覚悟
まず、費用の問題です。
値段を抑える為、できる限り効率的にサービスを提供しようとしている専門家も少なくありません。
もし、サービス内容をベストに近づけて欲しいのであれば、こうしたサービスではなく、値段が高くても、高い水準の仕事をしてくれるサービスを選ぶようにして下さい。
ただし、「それだけの費用をかけてまで、ベストな作業が必要なのか」という事は自問するようにはして下さい。
多くの専門家が提供するサービスは、一般的には問題ない水準で、費用とサービス内容のバランスが取れています。無闇に「最高のサービス」を求める事は、費用面で無駄である可能性が高いでしょう。
コミュニケーションの覚悟
次に、専門家との間で、十分なコミュニケーションを取る必要があります。専門家としては、貴方の事情を十分に理解しない事には、より良い手続きは出来ないからです。
また、その為に、貴方の側でも「知識の学習」が必要になるかもしれません。「相談者側に一定の知識がない限り、話し合いすら難しい」場合もあるのです。
継続的な関係構築
最後に、専門家との関係を一時的なものとして捉えないようにして下さい。
前述の通りですが、起業の準備が進むにつれて、「起業者側の事情」も変わる事があります。そして、事情が変われば、「最適な判断」も変わる事があります。
専門家にベストな作業を求めたいのであれば、「その専門家への相談を今後も継続する事」と「事情が変わった場合には、結論が変わって構わない」事を保証した上で、ベストな作業を依頼するようにして下さい。
依頼する内容を見極める重要性
専門家に対して、「丸投げするから、とにかく最高の仕事をして欲しい」と依頼される方もいらっしゃいますが、それが難しい事はお解り頂けましたでしょうか。
貴方に資金が潤沢にあり、時間も知識も十分にある場合は別ですが、そうでない場合には、士業など専門家に依頼する作業のうち、「高い水準にこだわるべきなのは、どの手続きについてなのか」という判断も大切です。
その見極めを上手に行い、限られた自分の資源をうまく振り分ける事が、「専門家への丸投げ」をうまく使って起業を成功させる秘訣です。
もし、「どの部分の手続きの品質にこだわるべきか」や「どのように専門家を使いこなせば良いのか解らない」といった点で悩まれた場合には、その点を起業全般に詳しい専門家に相談する事もお勧め出来ます。
起業の手続きを専門家に依頼する上で知っておくべき事(まとめ)
- 起業に関する手続きを専門家に丸投げする事は可能です。ただし、そのメリットとデメリットについては理解しておくべきです。
- 手続きを丸投げするメリットは、「貴方が楽できる」という当たり前の事です。
- その一方、丸投げするデメリットは、「コストの発生」と「ベストな結果が出るとは限らない」という2つです。
- 専門家に依頼して「最良の結果」を得る為には、貴方の側にも心構えが必要です。具体的には、「費用の覚悟」「コミュニケーションの覚悟」「継続的な関係構築」の3つです。
- ただし、起業に伴う多くの作業については、そこまで高い水準を求める必要は無いでしょう。貴方の起業において、「どの部分を高い水準で依頼しないといけないのか」を見極めるようにして下さい。