一般社団法人の設立を選ぶメリット・デメリット
この記事では、社団法人(一般社団法人)の設立を検討している人が知っておくべき内容について紹介します。
社団法人に関する制度は、2008年に大きな変更がありました。社団法人(一般社団法人)を設立して事業を始める事を計画されている場合には、最新の制度について十分に理解した上で計画を進めるようにして下さい。
社団法人(一般社団法人)の基本
社団法人を設立しようと考えている人が、最初に知っておくべき事は、「以前に存在していた社団法人の制度は既に存在しない」という事と、「過去に存在していた社団法人の制度と、現存する一般社団法人の制度は全くの別物である」という事です。
まず、「社団法人」という名前の組織形態は、既に存在しません(設立する事も出来ません)。過去に存在していた多くの社団法人の団体は、特例社団法人という組織形態を経由し、2013年11月までに他の組織形態への移行(または解散)が完了しています。
社団法人に近い組織形態で今から設立できるのは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」という法律に基づいて設立される「一般社団法人」という名前の組織形態になります。
しかし、この「一般社団法人」の制度においては、組織の目的が特に制約されていません。営利事業を積極的に手がける事も可能です。ですから、以前の社団法人のイメージで一般社団法人という制度を捉えないようにして下さい。
特に、税制面でのメリットを期待されている人は注意するようにして下さい。前述の通り、一般社団法人は営利事業の為に設立する事も可能です。この為、単に設立しただけでは、原則、税制上のメリットはありません。
税制上のメリットを受けるためには、一定の条件を満たす事が求められます。また、条件を満たした一般社団法人を設立できたとしても、全ての事業の税金が優遇される訳ではありません。優遇を受ける事が出来る対象は、かなり制限されています。
その一方、組織形態が違いますので、株式会社などと同じように運営できる訳ではなく、一般社団法人ならではのデメリットも存在します。
ですから、一般社団法人を設立する事を計画されている場合には、この記事を最後まで読み、貴方にとって、本当に一般社団法人が適切なのかどうかを熟慮するようにして下さい。
※一般社団法人の税制の優遇制度は複雑である為、この記事では詳しく取り上げません。お知りになりたい方は、個別に当社までお問い合わせ下さい。
※一般社団法人は、設立後に「公益社団法人」という名前の組織形態に変化させる事が出来る場合もあります。公益社団法人は、一般社団法人と比べれば税制上の優遇範囲が広い為、以前の社団法人に近い組織形態であると考える事も出来ます。ただし、公益社団法人を目指すハードルはかなり高い為、この記事では取り上げません。公益社団法人に関心のある方は、個別に当社までお問い合わせ下さい。
一般社団法人の特徴
一般社団法人には、株式会社などと比べて、次のような特徴があります。
- 会社名(法人名)に「一般社団法人」という名前が付く。
- 剰余金(事業を行って得た利益)の関係者への分配が原則できない。
- 法人への出資者が存在しない(法人の所有者がいない)。
- 組織運営上のルールが株式会社等とは大きく異なる(例えば、「株主総会」「取締役会」「代表取締役」などは一般社団法人には存在しない)。
- 設立や運営の際に必要となる費用の金額が株式会社等とは異なる。
- 税務優遇を受ける事が出来る仕組みが用意されている(一定の条件を満たす必要あり)。
一般社団法人を設立して事業を始める場合、これらの特徴がメリットやデメリットに繋がる事があります。具体的なメリット・デメリットについては、この後に説明しますが、一般社団法人を設立するのであれば、これらの特徴については十分に理解しておくべきです。
一般社団法人の設立を選ぶメリットとデメリット
株式会社など他の組織形態と比べ、一般社団法人の設立を選ぶメリットは次のような点です。
- 昔の「社団法人」のイメージから、一般社団法人に対して「株式会社よりも非営利性の高い組織」というイメージを持っている人もいる(事業運営上、そのイメージをうまく活用する事が出来る場合もある)。
- 設立時の費用を抑える事が可能な場合がある。
- 税制面で優遇を受ける事ができる場合がある。
逆に、一般社団法人の設立を選ぶデメリットは、次のような点です。
- 所有者がいない為、その組織に対して最終的に責任を持つ人が誰なのかが不明瞭になりがちである。
- 出資がなく、また、利益の分配も制限されている為、そのようなリターンを求める相手からの協力(資金拠出や事業への参加など)を得る事が難しい。
- 資本金がない為、財産基盤が脆弱であると評価されがちである(特に設立直後)。
- 株式会社等とは違うルールに則って組織運営を行う必要があるが、参考となる情報が非常に少ない。
- 運営費用が株式会社等よりも高額になる場合がある。
一般社団法人の設立を選んで良い人・悪い人
一般社団法人設立のメリットとデメリットを踏まえると、次のような人は、一般社団法人の設立を考えても良いかもしれません。
- 営利目的の為に設立されている事が広く知られている株式会社などの組織形態の名前を会社名(法人名)に使いたく無い場合。
- その法人の所有者を明確にしたくない場合。特に、所有権の譲渡を発生させたくない場合。
- 他の税制優遇が設定されている法人設立が難しいが、税制の優遇を受けたい場合。
逆に、次のような人は、一般社団法人の設立は考え直した方が良いでしょう。
- 事業による利益を分配したいと考えている場合。
- 法人の所有権を売買する可能性がある場合。特に、事業が成功した後、その企業を売却する可能性がある場合。
一般社団法人の設立を考えている人へのアドバイス
ここまでお読み頂いて、「理屈は理解したが、実際に自分に一般社団法人が合っているのかどうかは判断できない」と感じた人もいらっしゃる事と思います。貴方がそのように感じたとしても、それは全くおかしな事ではありません。
自分にあった組織形態を判断する為には、事業開始後の運営をかなり具体的にイメージする必要があります。しかし、法人運営に不慣れな人にとって、そのような作業は非常に難易度の高い作業です。
この為、知識や経験が十分ではない人にとって、表面的な情報だけで設立すべき組織形態を判断する事は非常に難しいものなのです。
とはいえ、組織形態の選択は大切です。一般社団法人を設立した後に当社に相談に来られた方の中には、結局、法人の設立をやり直す決断をされた方もいらっしゃいます。
ですから、「一般社団法人が自分に合っているのかどうか解らない」と感じた人は、専門家に相談した上で判断する事をお勧めします。
特に、貴方が初めて法人を設立しようとしているのであれば、「一般社団法人の仕組み」と「事業開始後の事業運営」の両方に詳しい専門家への相談をお勧めします。
法人の設立をサポートするような立場の専門家であれば、一般社団法人の制度については詳しいはずです。ですから、制度についての質問であれば、問題なく回答してくれる事でしょう。そして、既に法人運営に詳しい場合には、そのようなアドバイスだけで十分です。
しかし、貴方に知識や経験が不足している場合、事業開始後の事についても、かなり踏み込んだ分析をした上でのアドバイスを貰わないと、失敗を事前に防ぐ事が難しいのです。
そして、事業開始後の運営を踏まえたアドバイスをする事は、専門家にとっても決して簡単な事ではありません。この為、自分にとって十分なアドバイスをしてくれる相談相手を慎重に選ぶべきなのです。
繰り返しますが、知識も経験も十分にない人が一人で組織形態を選ぶのは、かなり困難です。失敗を避ける為にも、本やネットで手に入る表面的な知識だけで判断するのではなく、自分に合った専門家に相談した上で、一般社団法人設立についての方針は決定するようにして下さい。
なお、当社で一般社団法人の設立についての相談をお受けした場合には、まず、プレゼンテーション資料を用いて制度についての説明をさせて頂き、その上で、相談者の事業の詳細をお伺いしながら、適切な組織形態についてのアドバイスをさせて頂いております。少し時間はかかりますが、その位、組織形態の選択は難しく、また、大事な事だと考えております。
これから起業される方で相談相手にお困りの場合には、当センターの起業相談もご活用下さい。