• HOME
  • 起業
  • 基礎解説付き!フランチャイズで起業する人がやるべき2つの準備

フランチャイズでの起業

フランチャイズ(FC)の仕組みを利用して起業しようとする人は多いですし、フランチャイズチェーン加盟によるメリットは確かにあります。

しかし、フランチャイズの仕組みを利用した開業であっても、その本質は一般的な起業と変わりません。更に、フランチャイズによる起業特有のリスクやデメリットも存在します。

この記事では、「フランチャイズの基本」について触れた後、「フランチャイズで起業する人が、開業前に行うべき2つの準備」について解説します。

フランチャイズの仕組みの基本

最初に、フランチャイズの仕組みを簡単に解説しておきましょう。

日本におけるフランチャイズとは、加盟したフランチャイズチェーンの運営元が用意した商売の枠組みを利用して、加盟した者が商売を行う仕組みの事です。

仕組みの詳細は加盟するフランチャイズチェーンによって様々ですが、「フランチャイズチェーンが管理しているブランド名を利用して商売が出来るようになる」という点が基本にはなります。

また。一般的な店舗型の商売のフランチャイズの場合、開店や店舗運営に必要な仕組み(店舗のコンセプト、内装、什器、販売商品、運営マニュアル、仕入先の開拓)や販促(ブランドの宣伝、新規メニュー開発)などはフランチャイズの運営元がまとめて行います。人材教育まで行うケースもあります。

辞書で「フランチャイズ」という言葉を調べると、「親企業が一定地域内で与える営業販売権(新明解国語辞典 第七版)」などと説明されていますが、起業において「フランチャイズ」という用語が出てきた場合には、このような事まで含めた仕組みを指す事が一般的です。

フランチャイズに関する用語

次に、フランチャイズの仕組みに関係する用語を解説します。

フランチャイザー

フランチャイザーとは、フランチャイズの仕組みを提供している側の企業の事を指す用語です。日常の業務においては、「本部」などと呼ばれる事もあります。フランチャイズチェーンに加盟した者は、フランチャイザーに様々な支払いをする代わりに、そのフランチャイズの仕組みの上で営業をする事が許されます。

フランチャイジー

フランチャイジーとは、フランチャイズチェーンに加盟する側の企業(個人の場合もあります)を指す用語です。日常の業務においては、「加盟店」や「加盟企業」などと呼ばれる事もあります。

直営店舗(直営店)

フランチャイズチェーンであっても、フランチャイザーが自ら運営している店舗がある事もあります。そのような店舗を直営店舗(直営店)と呼びます。

フランチャイザーが直営店舗を設ける理由としては、「フランチャイジーを募集するモデルケースとする為」「運営改善に必要な情報を収集したり、テストをしたりする為」といった理由が挙げられます。

ただし、フランチャイズの仕組みを用意しているチェーンであっても、「直営店舗での運営が基本」というチェーンもあります。このようなチェーンの場合、「商売が厳しい範囲(地域など)だけをフランチャイジーに任せている」といったケースもありますので注意が必要です。

なお、直営店舗の逆で、フランチャイジーが運営している店舗の事は、「FC店舗」や「FC店」などと呼ばれます。

※以下では、「本部」と「加盟店」という用語を主に用いて解説を続けます。

フランチャイズチェーンの例

フランチャイズの仕組みが用意されているチェーンには、以下のようなものがあります(企業名ではなく、一般に認識されているブランド名で紹介)。

コンビニでは、「セブンイレブン」「ファミリーマート」「ローソン」など。

飲食では、「マクドナルド」「ミスタードーナツ」「リンガーハット」など。

カフェチェーンでは、「タリーズ」「ドトール」「コメダ珈琲店」など。

物販やレンタルでは、「TSUTAYA」「BOOKOFF」「オートバックス」など。

その他、ブランド名の紹介は控えますが、学習塾、クリーニング、フィットネス、マッサージ、介護、修理、買取など幅広い業種でフランチャイズチェーンは存在します。

フランチャイズを利用する2つのメリット

フランチャイズの仕組みを利用した起業のメリットは大きく2つです。

1つ目のメリットは、「起業する上で必要となる準備作業を大幅に省略して、事業をスタートさせる事ができる」というものです。

例えば、店舗型のビジネスであれば、店舗の設計や施工などの手配は本部が代行してくれる事が通常ですし、業務運営についても、本部からマニュアルやトレーニングが提供される事が一般的です。

このようなサポートを受ける事で、加盟店側は起業準備の多くの部分を本部任せにしていても起業が出来てしまいます。

2つ目のメリットは、「大企業が行うビジネスに近い強みを持って、事業を開始する事ができる」というものです。

加盟するフランチャイズチェーンの「ブランド力(知名度や信頼度など)」や「商品・サービスの開発力」などを開業直後から利用できる為、「大手企業の中で店舗を増やすような感覚」で起業する事が可能となります。

フランチャイズ加盟先による差

ただし、「フランチャイズの仕組みを利用する事によるメリット」は、どのフランチャイズチェーンに加盟した場合であっても同水準な訳ではありません。

まず、ブランド力については、ターゲットとする顧客層のほとんどが認知しているようなブランドを抱えたチェーンがある一方、個人が新規に立ち上げたブランドと大差ないような認知度のブランドしか持っていないチェーンも存在します。

また、日常業務のマニュアルがしっかりと確立されており、新人教育も本部がしっかりと行ってくれるようなチェーンがある一方、ブランドの利用許可だけを行い、細かい事は加盟店任せ、というチェーンもあります。

加盟するフランチャイズチェーンによって、「メリットが期待できる分野や度合い」は大きく異なるのです。

ただし、「(ある部分だけをみて)メリットが小さそうに見えるフランチャイズに加盟するのは止めた方が良い」という判断をするべきではありません。この記事を最後まで読んで頂ければ、それは理解して頂けるはずです。

フランチャイズを利用した場合の4つのデメリット

フランチャイズの仕組みを利用した起業には、フランチャイズを利用しなかった場合と比べて、4つのデメリットがあります。

コスト増加

1つ目のデメリットは、「コスト(費用)」の問題です。

フランチャイズ加盟によって、本部から様々なサポートが得られる一方、様々な名目で本部に対して支払が発生します。

フランチャイズを運営する側の企業は、「フランチャイズ契約によって利益を出す」というビジネスを行っています。これは、加盟店の側から見ると、「自分の利益を本部に奪われる」という事を意味しています。

フランチャイズ加盟にコスト以上のメリットがあり、そして、十分な利益が出ていれば問題とはならないでしょうが、本部への支払が経営を圧迫するケースもあります。フランチャイズに加盟すれば、「必ず儲かる」訳ではありません。

経営の自由度が狭まる

2つ目のデメリットは、「経営の自由度が狭まる」という問題です。

フランチャイズを運営する企業の多くは、全ての加盟店に「(自分たちが定めた)ルールを守った運営をして欲しい」と考えています。

しかし、これが、加盟店を苦しめる事があります。「営業時間を自由に決められない」「扱いたい商品・サービスを自由に選択できない」「値段を自由に決められない」などのルールが定められている事があるのです。

また、自社以外も同じブランドを使って商売をする事になるフランチャイズの仕組み上、営業範囲についても一定の制約がかかるのが通常です。一般的なのは営業地域に関する制約(新規出店の制約、受注可能エリアの制約など)です。

このように、フランチャイズチェーンに加盟すると、経営の自由度は狭まります。

加盟他社からの悪影響

3つ目のデメリットは、「同じフランチャイズチェーンに加盟している他の会社からの悪影響」という問題です。

フランチャイズにおける商売では、通常、本部が管理し、他の加盟店も使っているブランドを自社でも使う事になります。それにより、知名度のあるブランドを利用した商売が可能になります。

しかし、この点は、加盟しているフランチャイズチェーンで問題が起きた場合には、逆効果となります。

例えば、同じブランドを利用している他社(他の加盟店)が起こした問題によって、自社の営業に悪影響が出る場合があるのです。

起業に関する検討が甘くなりがち

4つ目のデメリットは、「起業に関する検討が甘くなりがち」という問題です。

メリットの所でも紹介した内容ですが、フランチャイズの仕組みを利用した起業においては、起業準備を本部に任せていても、開業が出来てしまう面があります。その結果、十分に自社の事業計画について検討せずに開業してしまう起業者が少なくありません。

しかし、そのような事業は環境変化に弱く、想定外の事態が発生すると、すぐに事業が続けられなくなったりします。

フランチャイズ加盟による失敗例

ここで、起業した側(加盟店側)から見た「フランチャイズの失敗例」を紹介しておきましょう。すなわち、「どのような時に、フランチャイズチェーンへの加盟を後悔する可能性があるのか」という事を理解して頂く為の事例です。

運営の自由がない

前述の通り、フランチャイズに加盟した場合、本部が定めた(本部と合意した)条件で事業を行う事になります。その結果、以下のような不満を加盟店側が持つ事があります。

  • 営業時間を設定する自由がなく、オーナーの勤務時間が長くなったり、深夜労働が避けられなかったりする。
  • 損失回避の為に割引販売(値下げ)をしたいが、価格設定の自由がない。
  • 新規顧客を獲得したいが、営業範囲が制限されている為に自由に顧客獲得ができない。

特に、大手フランチャイズチェーンでは、全店舗で統一された運営を目指している事が多く、また、本部が導入を決めた「様々な販促キャンペーン」や「新しい取り組み(新規サービス、情報システムの活用など)」にも参加を求められます。

このような事に苦しみ、フランチャイズチェーンの一員としての運営に嫌気がさす経営者もいます。

他の加盟店が起こした問題の影響を受ける

これも前述の通りですが、本部から借りたブランド名(看板)で事業を行っていると、一般消費者からは、他の加盟店との差が見えづらくなります。この為、他の加盟店が起こした問題の影響を受ける事があります。

例えば、他の加盟店において、「接客が悪かった」「法律を守っていない運営があった」などのクレームや問題が発生した場合、自社には全く非がない場合であっても、影響を受けてしまう事があります。特に、飲食業の場合には、「衛生面での悪い評価」などが出た場合には、集客に大きな影響が出ます。

このような事によって、経営状況が大幅に悪化したり、様々な対応を強いられたりした場合、「フランチャイズ加盟のメリットよりもデメリットの方が大きかった」と考えるようになる経営者もいます。

フランチャイズ本部の能力不足

加盟した当初は良かったものの、「競合他社が現れたにも関わらず、本部の対応が十分ではなく、売上が大幅に下がった」といった事態が発生するケースもあります。

このような場合、経営者としては、本部に対して大きな不満を抱える事になります。また、売上減少幅によっては、事業を続けられなくなってしまう事もあります。

フランチャイズ本部の破綻

加盟したフランチャイズチェーンが破綻してしまう事もあります。最近も、ホテル、飲食、マッサージなど様々な本部が破綻しました。

破綻によって、どのような悪影響を受けるかはケースバイケースですが、多くの場合では、期待していたフランチャイズ加盟によるメリットは期待出来なくなります。また、破綻の混乱に巻き込まれる事になります。

フランチャイズ加盟と起業の関係

フランチャイズの仕組みを利用して起業を行う人が絶対に忘れてはいけないのは、「フランチャイズの仕組みを利用しても、貴方が起業する事に違いはない」という事です。

当たり前の事だと思われるかもしれませんが、フランチャイズの仕組みを利用して起業する人は、「事業運営に関する全責任が自分にある」という事を忘れがちなのです。

しかし、貴方の「事業の成功」について、本部は何も保証をしてくれません。ですから、貴方は、「フランチャイズの仕組みを利用する事に本当にメリットがある」と判断できる場合にのみ、そのフランチャイズチェーンに加盟するべきなのです。

フランチャイズ加盟によるコスト(費用)についても、「安ければ良い」というものでもありません。安い場合には「ブランドの使用権だけで、本部のサポートは弱い」や「制約ばかりのビジネスしか出来ない契約になっている」といったケースもあります。あくまで、貴方がフランチャイズ加盟で得られる「メリット」とのバランスで「コスト」については考える必要があります。

貴方には、「フランチャイズに加盟しない自由」や「加盟するフランチャイズチェーンを選ぶ自由」がある事を忘れないようにして下さい。フランチャイズチェーンに加盟はしたいが、提示された条件では事業が立ち行かなくなりそうなのであれば、「フランチャイズ契約について交渉する」という事ができる場合もあるでしょう。

フランチャイズを利用して起業する人が行うべき2つの準備

フランチャイズの仕組みを利用した起業で失敗したくない人は、その準備過程で以下の2つの作業を必ず行うべきです。

  • フランチャイズ加盟によるメリットとリスクを分析する
  • 通常の起業と同様に事業計画を作成する

この2つの準備を行い、起業に関する適切な判断を行えば、フランチャイズの仕組みを利用した起業特有の問題は回避することが出来ます。

フランチャイズ加盟によるリスクの分析

前述の通り、フランチャイズ契約によって得られるものは一律ではありません。

ですから、「フランチャイズに加盟するにあたって、何を期待するのか(期待して良いのか)」という事は、しっかりと見極めておく事が大切です。

また、フランチャイズに加盟する事によるデメリットやリスクについても、しっかりと分析をしておくべきです。

これらの分析が不十分な場合、その起業は「フランチャイズを利用しなかった場合よりも、危ない起業となる可能性がある」と考えるべきです。

通常の起業と同様に事業計画を作成する

そして、本部から提示された採算見積もり(売上や利益に関する予想)を信用するのではなく、起業する貴方自身で事業計画をしっかりと作るようにして下さい。

開業後に事業運営で問題が発生した場合、貴方自身が対策を打ち出し、乗り越えていかなければなりません。

そのような事まで事前にしっかりと考えた上で起業しなければならないのは、フランチャイズの仕組みを利用した起業であっても、普通の起業と全く同じなのです。

「フランチャイズの仕組みを利用するから、あまり深く起業の事を考えなくて良い」とは絶対に考えないようにして下さい。

知識や経験がないフランチャイズ利用予定者へのアドバイス

なお、このような作業に苦手意識があったとしても、難しく考えすぎる必要はありません。起業する貴方には、「必要な経営判断の為に、外部の専門家を活用する」という対応策があります。

会社員時代であれば、勤務先の会社が様々な専門サービスを契約し、社内だけでは検討できない事項に対応していたはずです。今度は、起業する貴方が、そのような専門サービスを活用すれば良いだけの事なのです。

そして、ここまで解説してきた通り、フランチャイズを利用した起業においては、「開業後の事業運営についての様々な分析」が重要となります。

ですから、フランチャイズを利用して起業する貴方は、「起業後の事業運営」に詳しい専門サービスを活用する事をお勧めします(当センターでも、経営支援の専門会社と連携して、そのようなニーズに対応できるように体制を整えております)。

関連記事一覧