資格を活かした起業
せっかく資格を取得して開業しても、事前に思い描いていたような成功を実現出来る人は一握りです。
この記事では、「どうすれば、資格を活かした起業を成功させる事が出来るのか」という質問に回答します。
資格で起業する人が最初に理解しておくべきこと
大事な事なので繰り返しますが、資格での起業を失敗させる人は多いです。
そして、そうした人の多くに共通するのは、「資格があれば、成功できるはず」という過信です。
はっきりと申し上げますが、「資格さえあれば、成功できる」という時代は過去のものです。
貴方が取得した(する)資格が、どれほど取得が難しいものであっても、この事実は変わりません。今は、弁護士や医師の開業であっても、失敗してしまう時代なのです。もっと難易度の低い資格であれは、資格だけで成功できる可能性は更に低くなります。
ただし、誤解して頂きたくないのは、「資格が無意味になった」わけではありません。資格の持つ意味を正しく理解し、適切に準備を行えば、勿論、起業は成功します。
資格を活かした起業が失敗する原因
失敗した人が行った起業の準備
資格で開業し、残念ながら失敗した人に、「どのような準備をして、起業したのか」という事をお聞きすると、以下のようなケースが多い事が解ります。
- 資格を取得する事を目標として長年頑張ってきたので、資格が取れた以上、開業してしまって問題ないと考えた。
- 自分の事務所(会社)で取り扱う業務については、自分が資格を取る為に学習した内容を、そのまま当てはめれば良いと考えた。
- 自分が大変な思いをして取得した資格の「専門領域」には、十分なニーズがあるはずと無意識に思ってしまっていた。
理解して頂きやすいように、少し長めに書きましたが、後ほど紹介させて頂く、「起業を成功させる為のステップ」と見比べて頂くと、随分と違う事に気づいて頂けると思います。
この違いは、一言で言えば、「起業を甘くみている」という事になります。しかし、そのような考えをしてしまうのには、資格保有者に特有の事業があります。
起業を甘く考えてしまう理由
資格取得者が、「起業を甘く考えてしまう」理由についても、ここで解説しておきましょう。聞きたくないような点ばかりかもしれませんが、成功したいのであれば、目を背けずに読んで頂きたいと思います。
- 周りには、資格取得者で成功している人がいる(または、そういった人の話を聞く)。この為、資格さえ取得すれば、成功出来ると思ってしまう(または、そう思えたからこそ、苦労して資格を取得した)。
- 資格を取得する為には、大変な努力をした。膨大で専門的な内容を学習する必要もあった。この為、その知識は、世の中で求められているはずであり、開業さえすれば、仕事はどんどん来るはずだと思ってしまう。
どちらも、一昔前であれば問題とはならなかった認識です。しかし、今、起業するのであれば、このような認識に基づいて起業するのは大変に危険です。
もっとも、過度に心配する必要はありません。以前より難易度が上がっているとはいえ、適切に準備をして起業すれば、一般的な起業よりも、「資格を生かした起業」が成功し易いのは間違いありません。貴方のこれまでの努力は、無駄ではありません。
資格を活かした起業を成功させる為の3つのステップ
では、資格を活かした起業を成功させる為には、どのように準備を行えば良いのでしょか。
その為には、次のステップで準備をする事です。
- 起業において資格が持つ意味を知る
- 資格を無駄にしない事業計画を作成する
- 資格だけでは足りない起業の準備をする
これらのステップを踏む事によって、これまで取り上げた問題点を克服して起業の準備をすることが出来ます。
起業において資格が持つ意味を知る(ステップ1)
ここからは、資格を生かした起業を成功させる為の、具体的な作業の説明に入っていきましょう。
資格が持つ意味を理解する必要性
資格を生かした起業を考える貴方が、真っ先に行うべき事は、「資格が持つ意味を、正しく理解する」という作業です。
貴方が持つ資格は武器です。起業において、それを生かさない手はありません。しかし、同時に、「それに頼ってしまい、起業を甘く考えてしまう原因になる」という意味では、弱点とも言えます。
まずは、「貴方が持つ資格が、起業にとって、どういった意味を持つのか」という事を、正しく理解する必要があります。それ無しには、「成功する起業はあり得ない」と思って下さい。
資格取得の意味
資格によっては、法律などによって、「その資格がない人は取り扱ってはいけない」という業務内容が定められているケースがあります。こうした業務の事を、「独占業務」といいます。
せっかく資格を取ったのであれば、その資格に与えられている「独占業務」を活用する事は、当然に考えるべきですし、自分が保有する資格の「独占業務の範囲」については、正確に理解しておくべきです。
ただし、「独占業務があるから、成功できる」という考え方は危険です。独占業務のある資格は、「独立しやすい」とメディアなどで取り上げられる事もあります。しかし、それぞれの資格における、「典型的な独占業務」においては、既に「激しい競争状態が生まれている」事がほとんどだからです。
ですから、安易に、「その資格の独占業務を、業務内容として起業すれば良い」と考える事はお勧め出来ません。
この点については、大事な事なので、後で再度取り上げます。
※独占業務以外でも、その資格に、「専門家」として世間から認識されている領域があれば、それは強みになり得るでしょう。
※この他にも、資格保有の価値は複数の視点から分析する事が出来ます。当方では、主に4つの視点で分析を行っていますが、長くなりますので、この記事では省略します。興味のある方は、お問い合わせ下さい。
武器になる資格・ならない資格
自分なりに、自分の資格についての分析が終わったら、次のステップに進むようにして下さい。
なお、資格を持っているからといって、必ずしも、その資格を中心に起業を検討する必要はありません。検討する中で、「自分には、他に向いている事業内容がある」と思えたならば、その気持ちも大事にするようにして下さい。
資格の中には、「大きな会社の中でのみ活用出来る資格」や「他の資格の模擬試験的に皆が受験するだけの資格」などもあり、残念ながら、「ほとんど開業にプラスにならない資格」も存在します。もし、自分の資格が、起業において「強みにならない」事が解った場合には、資格に頼らない起業に切り替える決断も必要です。
資格を無駄にしない事業計画を作成する(ステップ2)
資格に関する事業を検討する前提
改めて申し上げますが、貴方が保有する「資格」の専門領域を、そのまま「自分の事業内容」と考えて検討を進めても、貴方が成功出来る可能性は低いと思って下さい。
この内容は前述の通りですが、大事な事なので、再度、取り上げます。
資格が対応する専門領域は、貴方に「知識がある」領域であり、資格によっては、「貴方が行う事を許されている」領域です。しかし、その領域は、貴方と同じ資格を持っている全員が共通して扱える領域です。
そして、その資格が今日生まれたのではない限り、貴方よりも知識も経験も上の「同一資格保有者」が必ずいます。
ですから、「貴方が資格取得の為に学習した内容」だけを強みとして商売をしている限り、必ず、「貴方よりも他の人が、能力面では選ばれる可能性が高い」状態が続きます。長年業務を行ってきた先輩の競争力を甘くみてはいけません。
昔は、美味しい仕事が十分にあったので、そういった難しい事を考えなくても、「資格さえ取れば食べていける」資格もありました。しかし、今は、「そのような美味しい話はない」と割り切って下さい。
資格を活かした事業計画の作成
では、貴方はどうすべきか。
貴方は、他の同一資格保有者よりも「競争力のある事業」を立ち上げなければならないのです。
言い替えれば、「客が、(他の専門家ではなく)自分を選ぶ理由」を説明出来るようにしなければなりません。
多くの場合、この作業は、「(資格以外の)貴方の強みを見つけ、それを差別化要因とする」といった作業や、「他の専門家がいない(または少ない)、仕事の領域を見つける」といった作業になります。
もちろん、その領域に、本当に顧客のニーズがある事が大事です。
実は、資格がカバーする領域には、「お金を払っても良い」と思っている顧客が存在しない領域も多いのです(ただし、そうした領域であっても、売り出し方を変える事で、お金が払って貰えるようになる事もあります)。
こうした作業の事を、「事業計画を作成する」と呼びます(実際には、事業計画は、もっと広範な内容を含みますが、まずは、ここで書いている内容だけでも実行して貰えれば大丈夫です)。
なお、この作業は、多くの会社や個人が競争に勝って生き残る為に、毎日、行っている作業と同じです。ですから、貴方に「やらなければならない事」として伝えているのは、実は、「他の人(会社)が当たり前にやっている事と、同じ事をやって下さい」という事に過ぎません。
そして、その「当たり前の事」が出来ずに失敗していくケースが多いのが、「資格を活かした起業を考える人」の特徴です。
資格だけでは足りない起業の準備をする(ステップ3)
競争に勝てる事業の為の準備
事業計画、すなわち、貴方が「選ばれる理由」がはっきりしたのであれば、次は、その事業を成功させる為の準備をして下さい。
よほど、貴方が「特別な武器」を持っていて起業するのでない限り、貴方が考えた「競争に勝てる事業」を始める為には、準備が必要なはずです。
例えば、貴方が「勝負する」と決めた領域に関しては、誰にも負けない程に知識を強化すべきでしょう。
また、それを、「いかに、潜在的な顧客に知って貰うのか」という方法についても、考えなければならないでしょう。
他にも、貴方の事業が「選ばれる事業」になる為には、貴方を助けてくれる「人」であったり、他の会社との「契約」だったりが必要かもしれません。そうした要素を洗い出し、準備をして下さい。事業を開始するのは、その後です。
事業計画の練り直し
そして、準備を進める中で、「実は、事業計画通りの起業は難しそうだ」と解る事もあります。
例えば、「自分よりも優れた競争相手が多数存在する領域である事が解る」こともありますし、「ニーズを踏まえると、割に合わない商売である事が解る」こともあるでしょう。
そのような場合には、迷わず、事業計画を練り直して下さい。それが、資格を生かした起業を成功させる鍵でもあります。
そして、ここまでのステップに沿って検討を進め、「成功出来る」と確信が持てるまでに準備が終わったならば、ようやく、事業を開始して下さい。
事業開始後も、事業計画の見直しは必要ですが、事前にしっかりと考えた事業計画があれば、適切に見直しを行いながら事業を進めていく事は出来るでしょう。成功への道は明確なはずです。
貴方が起業や経営の専門家でない場合にやるべきこと
ここまで、この記事を読んで、かなり「お疲れ」の方も多いでしょう。多くの方にとって、それは当然です。
それは、多くの方にとって、「この記事で説明している内容は、専門外の領域」であるからです。
できる限り解りやすく説明はしていますが、それでも、専門外の領域について学習する事は、疲れるものなのです。
そして、だからこそ、貴方の専門領域においても、「(その領域を専門としていない人から)お金が貰える可能性がある」のです。
もし、ここまでの内容を読んで、貴方が「自分は、起業や経営について詳しくない」と自覚されたり、「起業を成功させる自身がない」と感じられたりされた場合には、その気持ちを大事にして、起業の専門家を活用する事を検討して下さい。
貴方が、「何かの分野で仕事が貰えるはず」と考えているのは、その分野の初心者にとって、貴方は「お金を払っても良いだけのサービスが提供できる」と確信しているからであるはずです。それと同じ事が、「起業」においても言えます。
貴方が、自分の専門領域の価値を認めているのであれば、貴方が専門としてしない「起業を成功させる」という目的の為のサービスにも、十分な価値を認めるようにして下さい。そして、起業の専門家の力を活用する事で、自分の起業を成功させる事をお勧めします。
資格を生かした起業の多くが失敗する理由と対策(まとめ)
- 資格を生かした起業で失敗してしまう人は多いです。その背景には、資格保有者に特有の事情があります。
- 資格での起業を成功させる為には、「起業において資格が持つ意味を知る」「資格を無駄にしない事業計画を作成する」「資格だけでは足りない起業の準備をする」といったステップに沿って準備を行う事が大切です。
- 保有する資格にもよりますが、多くの資格には、起業に活かせる「いくつかの特徴」があります。ただし、その特徴全てが、貴方の起業にとって、実際に「強み」と出来るかどうかは解りません。資格の持つ特徴を正しく理解する事が必要です。
- 資格がカバーする領域を、丸ごと「貴方の事業領域」とする事はお勧め出来ません。その領域には、お金が稼げない領域も含まれていますし、同一資格保有者は全員が競争相手となります。自分が勝負する領域を別途考える必要があります。
- 事業を開始する前には、準備をしっかりと行う必要があります。時には、事前に考えていた事業内容を見直す事も必要です。
- 貴方が経営や起業について苦手意識があるのであれば、そういった領域の専門家に頼る事も検討すべきです。貴方が「何かの分野の専門家」であるように、貴方が苦手な分野にも専門家は存在します。専門家を活用するメリットは、「何らかの分野の専門家」である貴方が一番良く理解しているはずです。